HOW TO図でわかる!はじめてのヒューズ選び
パソコン、テレビ、医療機器、工場の機械――電気で動く製品のほとんどに、小さな「ヒューズ」が入っています。ふだんは目立たない部品ですが、故障や事故が起きたとき、最後に機器と人を守るとても大切な存在です。
ところが、いざ自分で選ぼうとすると、「T」「250V」「L」といった記号の意味がわからず、手が止まってしまう方も多いはず。この記事では、電子部品の仕事を始めたばかりの方や、はじめてヒューズを選ぶ方に向けて、ヒューズのしくみから選び方までを、図をたくさん使ってやさしく説明します。
3行でわかる!この記事のポイント
- ヒューズは、電気が流れすぎたら切れて機器を守る部品
- 選ぶときは4つの数字と種類を見る
- 切れたヒューズを大きい定格に替えるのはNG
ヒューズってなに?
ヒューズは、回路に「流れすぎ」の電流が流れたとき、自分が溶けて切れることで回路を止める部品です。中には細い金属の線(エレメント)が入っていて、ふだんの電流では何も起きません。
ところが、故障などで決められた以上の電流が流れ続けると、その熱で線が溶けて切れ、電気の流れを止めます。
ヒューズは電源と機器の間に入れて使います。ふだんと異常時で、電気の流れがどう変わるかを見てみましょう。
切れる!×機器を守る流れすぎた電気を止める
身近なところでは、家の分電盤にあるブレーカーと同じ仲間です。ブレーカーはスイッチを戻せば何度でも使えますが、ヒューズは一度切れたら新しいものに交換します。
そのぶん構造がシンプルで、小さく、安く、確実に働くのが強みです。
用語メモ
- 溶断(ようだん)
- ヒューズの中の線が、電流の熱で溶けて切れること。「ヒューズが飛ぶ」ともいいます。
- エレメント
- ヒューズの中にある、溶けて切れる部分の金属の線。
記号を読んでみよう
ヒューズの金属のふた(キャップ)には、小さな文字で性能が刻まれています。よく使われる5×20mmのガラス管ヒューズなら、たとえば「T2AL250V」のように書かれています。
一見暗号のようですが、4つに分けると意味がわかります。
2A定格電流
L遮断容量
250V定格電圧
「T2AL250V」=タイムラグ・2アンペア・低遮断・250ボルト
つまりヒューズを選ぶというのは、この4つの数字や記号と、ヒューズの種類(形)を決めることです。メーカーによって並び順や書き方は少し違いますが、意味は同じです。
選び方は5ステップ
ここからは、ヒューズを選ぶ手順を5つのステップに分けて説明します。上から順番に決めていけば、迷わずに選べます。
- 1定格電流ふだんの電流に余裕を
- 2切れ方速断かタイムラグか
- 3定格電圧回路の電圧以上
- 4遮断容量ショートでも安全に
- 5種類交換しやすさ・大きさ
STEP 1 定格電流:ぎりぎりはダメ
最初に決めるのは定格電流、つまり「このヒューズにどれだけの電流を流せるか」です。ここでのポイントは、ふだん流れる電流ぎりぎりの定格を選ばないこと。
ヒューズは熱で切れる部品なので、ぎりぎりで使い続けると中の線が少しずつ傷み、ある日突然、異常がないのに切れてしまうことがあります。
北米の UL 規格のヒューズでは、定格電流の75%くらいまでで使うのが一般的な目安です。ふだん1.2A流れる機器なら、どの定格がよいか計算してみましょう。
1.2A ÷ 0.75 = 1.6A → 1.6A以上でいちばん近い標準の定格 2A を選ぶ
また、機器の中が暑いと、同じ電流でも切れやすくなります。熱を出す部品の近くに置く場合は、メーカーのデータシートで温度による補正を確認し、もう一段余裕を持たせましょう。
用語メモ
- 定格電流
- ヒューズに流せる電流の基準となる値。単位はアンペア(A)。
- ディレーティング
- 周りの温度などの条件に合わせて、使える電流を割り引いて考えること。
- データシート
- メーカーが部品ごとに出している、性能や寸法をまとめた資料。
STEP 2 切れ方:突入電流があるならタイムラグ
ヒューズには、電流が増えてからどのくらいの速さで切れるかによって種類があります。代表的なのが、すばやく切れる速断(F)と、少し我慢してから切れるタイムラグ(T)です。
ここで知っておきたいのが突入電流です。電源やモーターのある機器では、スイッチを入れた瞬間だけ、ふだんの何倍もの電流が一瞬流れます。
速断ヒューズはこれに反応して切れてしまうことがあるため、こうした回路にはタイムラグを使います。下のグラフで、2つの切れ方のちがいを見てみましょう。
溶断特性曲線(時間-電流特性曲線)のイメージ。曲線より上側に入ると、ヒューズは切れます。
このグラフは、メーカーのデータシートに必ず載っている溶断特性曲線(時間-電流特性曲線、英語では Time-Current Curve)を簡単にしたものです。
横軸が流れる電流、縦軸が切れるまでの時間で、曲線が左下にあるほど、すばやく切れることを表します。突入電流の点は速断の曲線より上にあるので速断は切れ、タイムラグの曲線より下にあるのでタイムラグは切れません。
- T(タイムラグ):電源回路・モーター・トランスなど、スイッチを入れた瞬間に大きな電流が流れる回路に
- F(速断):半導体など、少しの過電流でも壊れてしまう部品を守りたいときに
用語メモ
- 溶断特性
- 電流の大きさと、切れるまでの時間の関係。速断(F)、タイムラグ(T)などで表します。超速断(FF)、中間(M)、超タイムラグ(TT)もあります。
- 溶断特性曲線
- 溶断特性をグラフにしたもの。時間-電流特性曲線ともいいます。
- 突入電流(ラッシュ電流)
- 電源を入れた瞬間に一瞬だけ流れる、大きな電流。
STEP 3 定格電圧:回路の電圧「以上」
定格電圧は、「その電圧まで電気を通せる」という意味ではなく、ヒューズが切れたときに、安全に回路を切り離せる電圧の上限です。
ヒューズが切れる瞬間には、切れた線のすき間に「アーク」と呼ばれる火花が飛びます。電圧が高いほど、この火花は消えにくくなります。
そのため、回路の電圧と同じか、それより高い定格電圧のヒューズを選びます。また、直流(DC)は交流(AC)よりアークが消えにくい性質があるので、直流の回路ではDCの定格が示されたヒューズを選びましょう。
太陽光発電や蓄電池など、高い直流電圧を扱う機器では特に大切です。
用語メモ
- アーク
- 電気が流れている線が切れるとき、すき間に飛ぶ火花。
- AC/DC
- AC は交流(コンセントの電気)、DC は直流(電池などの電気)。
STEP 4 遮断容量:ショートしても安全に切れるか
遮断容量は、ショート(短絡)のような大事故で、ものすごく大きな電流が流れたときに、ヒューズ自体が壊れずに安全に回路を切れる電流の上限です。遮断容量が足りないと、切れるときにヒューズのガラス管が割れたり、中身が飛び散ったりするおそれがあります。
5×20mmの管ヒューズでは、国際規格(IEC 60127-2)で次の3つの区分が決められています。棒の長さで、その差の大きさを見てみましょう。
AC250Vの場合。L は「35A、または定格電流の10倍の大きい方」
コンセントから直接電気が入ってくる一次側の回路では、ショートしたときに大きな電流が流れるおそれがあるため、遮断容量の大きい H タイプを選ぶのが安心です。見分け方のヒントとして、低遮断は中が見えるガラス管、高遮断は砂が詰まったセラミック管のものが多く使われています。
用語メモ
- 遮断容量
- ヒューズが安全に切ることのできる、最大の電流。
- 一次側/二次側
- 電源装置で、コンセントにつながる側が一次側、電圧を変えたあとの側が二次側。
STEP 5 ヒューズの種類
最後に、ヒューズの形(種類)を選びます。大きく分けると、次の3つがよく使われます。
「お客様が自分で交換できるようにしたいか」「機器をどこまで小さくしたいか」「組み立ては自動か手作業か」によって選びます。
管ヒューズ
5×20mm などの定番の形。ヒューズホルダーやクリップに入れて使い、切れたら手で交換できます。
リード線付きヒューズ
両端に線が付いたタイプ。基板の穴に差して、直接はんだ付けします。
表面実装(SMD)ヒューズ
基板の表面に直接はんだ付けするタイプ。機器を小さくでき、自動で実装できます。
写真:By SCHURTER
用語メモ
- SMD(表面実装部品)
- 基板の表面に置いて、はんだ付けする部品。機械で自動で取り付けられます。
- ヒューズホルダー
- ヒューズを入れておく部品。ふたを開けてヒューズを交換できます。
やりがちな失敗3つ
最後に、はじめてヒューズを選ぶ方がやりがちな失敗を3つ紹介します。どれも、機器の安全にかかわる大切なポイントです。
切れたら大きい定格に替える
ヒューズが切れたのは、回路に異常があるサイン。定格を上げると、守るべきときに切れず、火事のおそれも。
まず原因を調べましょう。
電源回路に速断を使う
突入電流で切れてしまい、「電源を入れるたびに切れる」トラブルの原因に。
遮断容量を見ない
電流と電圧が合っていても、ショートのときに安全に切れないことがあります。
まとめ:選ぶ前のチェックリスト
ヒューズは小さな部品ですが、機器の安全を最後に守る大切な部品です。選ぶ前に、次の5つを確認しておけば安心です。
- ふだんの電流は? → 余裕のある定格電流
- 電源を入れた瞬間に大きな電流は流れる? → T か F か
- 回路の電圧は? ACかDCか? → 定格電圧
- コンセントに直接つながる? → 遮断容量
- 交換する?小さくしたい? → ヒューズの種類
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