HOW TOパワーエントリーモジュールとは?電源入口をひとつにまとめるメリット

2026年10月15日技術コラム

この記事は約8分で読めます

パソコンや計測器、医療機器の背面には、電源コードを差し込む部分があります。じつはその小さな部分に、電源スイッチやヒューズ、ノイズを抑えるフィルターまでまとめて入っていることがあります。

それが「パワーエントリーモジュール」です。この記事では、パワーエントリーモジュールとは何か、どんなメリットがあるのか、どう選べばよいのかを、図を使ってやさしく説明します。

3行でわかる!この記事のポイント

  1. パワーエントリーモジュールは、電源の入口の部品をひとつにまとめた部品
  2. 中身はインレット・スイッチ・ヒューズ・フィルターの組み合わせ
  3. 機器が小さくなり、組み立てが楽になり、規格対応もしやすい

パワーエントリーモジュールってなに?

電気で動く機器には、コンセントから電気を取り込む「入口」が必要です。

この入口には、電源コードを差し込む部分のほかに、電源スイッチ、機器を守るヒューズ、ノイズを抑えるフィルターなど、いくつもの部品が必要になることがよくあります。

これらを別々に取り付けると、部品の数も配線も増えてしまいます。そこで、入口に必要な部品をひとつにまとめたのがパワーエントリーモジュールです。

別々に付けると

インレットスイッチヒューズホルダーフィルター

穴あけ4か所・部品どうしの配線が必要

→

パワーエントリーモジュールなら

インレット+スイッチ+ヒューズ+フィルター

穴あけ1か所・中の配線は済んでいる

用語メモ

パワーエントリーモジュール
電源の入口の部品をひとつにまとめた部品。「電源入力モジュール」とも呼ばれます。
インレット
機器側にある、電源コードを差し込む部分。国際規格 IEC 60320 で形が決まっています。

中に入っているもの

パワーエントリーモジュールは、製品によって中身の組み合わせがさまざまです。代表的なのは、次の4つの機能です。

正面から見た様子を図にしてみました。フィルターは、ふだんは見えない内部に入っています。

1

インレット

電源コードを差し込む部分。C14(10A)や C20(16A)などの形があります。

2

電源スイッチ

機器の電源を入れたり切ったりするスイッチ。照明付きのものもあります。

3

ヒューズホルダー

ヒューズを入れる引き出し。1極用と2極用があり、外からヒューズを交換できます。

4

EMCフィルター

電源線から入るノイズや、機器から出るノイズを抑えます。

このほか、100V地域と200V地域で切り替えて使うための「電圧切り替え」が付いた製品もあります。

用語メモ

EMCフィルター(ノイズフィルター)
電源のノイズを抑えるための部品。ラインフィルターとも呼ばれます。
1極/2極
電源の2本の線のうち、片方だけにヒューズを入れるのが1極、両方に入れるのが2極です。

まとめて使う4つのメリット

部品をひとつにまとめると、機器を作る側にとってうれしいことがたくさんあります。代表的な4つを紹介します。

1

機器を小さくできる

部品ごとの取り付け穴やスペースがいらなくなり、背面や内部をすっきりさせられます。

2

組み立てが楽になる

部品どうしの配線が済んでいるので、作業の手間や配線ミスが減ります。

3

安全規格に対応しやすい

認証を取得したモジュールを使うと、機器としての規格対応を進めやすくなります。

4

ノイズ対策がしやすい

ノイズの出入り口である電源入口で、まとめて対策できます。

部品の数が減るので、購買や在庫の管理が楽になるのも、見逃せないメリットです。

選び方は5ステップ

パワーエントリーモジュールは種類がとても多い部品です。次の5つのステップで、順番に絞り込んでいきましょう。

  1. 1必要な機能何を入れるか
  2. 2定格電流機器の電流に合うか
  3. 3インレットの形アースの有無
  4. 4フィルター一般用か医療用か
  5. 5取り付け方固定方法と端子

STEP 1 必要な機能:どれを入れる?

まずは、インレットのほかに何が必要かを決めます。

スイッチ・ヒューズ・フィルターのうち、必要なものだけを組み合わせた製品が用意されています。全部入りが一番便利ですが、必要のない機能まで入れると、大きさや価格が上がります。

インレット+ヒューズ
インレット+スイッチ+ヒューズ
インレット+ヒューズ+フィルター
全部入り(スイッチ+ヒューズ+フィルター)

組み合わせの例。必要な機能だけを選べます

STEP 2 定格電流:機器の電流に合わせる

機器がふだん使う電流に合わせて選びます。

一般的な電子機器では、1〜10A程度の製品がよく使われます。10Aを超える大きな電力の機器では、16A に対応したタイプ(C20 インレットなど)を検討します。中に入れるヒューズの定格も、機器の電流に合わせて選びましょう。

STEP 3 インレットの形:アースの有無を確認

インレットの形は、機器の電流と、アース(接地)が必要かどうかで決まります。

金属のケースを持つ機器は、感電を防ぐためにアースが必要な「クラスI」機器です。一方、二重に絶縁してアースを使わない「クラスII」機器には、アースピンのないインレットを使います。

インレット 定格電流(IEC) アース 主な用途
C14 10A あり 一般的な電子機器(クラスI)
C18 10A なし 二重絶縁の機器(クラスII)、在宅医療機器など
C20 16A あり 大きな電力の機器

用語メモ

クラスI/クラスII
感電を防ぐ方法による機器の分け方。クラスIはアースで、クラスIIは二重の絶縁で人を守ります。
アース(接地)
機器のケースを大地につなぎ、もれた電気を逃がすしくみ。

STEP 4 フィルター:一般用か、医療用か

フィルター付きを選ぶ場合は、フィルターの種類を決めます。

ノイズを抑えるフィルターは、そのしくみ上、ごくわずかな電流をアースへ流します。これを「漏れ電流」といいます。ふつうの機器では問題になりませんが、医療機器では患者さんの安全のため、漏れ電流の上限が厳しく決められています。

一般用フィルター

ノイズを抑える力が強い。一般の電子機器、産業機器などに。

医療用フィルター

漏れ電流を小さく抑えたタイプ。医療機器に。SCHURTER では「M5」「M80」などの記号で表されます。

用語メモ

漏れ電流
本来の回路以外を通って、アースなどへわずかにもれる電流。
IEC 60601-1
医療用の電気機器の安全についての国際規格。漏れ電流の上限なども決められています。

STEP 5 取り付け方と端子

最後に、機器への取り付け方と、配線のつなぎ方を選びます。

パネル(機器のケース)にどう固定するか、配線をどうつなぐかで、組み立てやすさが変わります。スナップイン式を選ぶときは、パネルの厚さが製品の対応範囲に入っているかも確認しましょう。

ねじ止めスナップイン(はめ込み)前面取付背面取付
ファストン端子はんだ端子基板用端子リード線付き

上段:取り付け方 下段:端子(配線のつなぎ方)

用語メモ

スナップイン
パネルの穴にはめ込むだけで固定できる取り付け方。ねじがいりません。
ファストン端子
平たい金属の端子に、コネクターを差し込んで配線する方式。

SCHURTER社の代表的なシリーズ

アスカ電子が取り扱う SCHURTER社は、パワーエントリーモジュールを幅広くそろえるスイスのメーカーです。代表的なシリーズを紹介します。

KFA

C14インレット+ヒューズ+フィルターのコンパクトなモジュール。医療用フィルター品もあります。

KMF

スイッチ・ヒューズ・フィルターを小さくまとめた多機能タイプ。クラスII版もあります。

DC12

突入電流に強いスイッチとフィルターを備えたモジュール。在宅医療機器向けのクラスII版も。

5707

機器側を IP65 で密閉した、水や液体に強いタイプ。洗浄する医療機器などに。

やりがちな失敗3つ

最後に、はじめてパワーエントリーモジュールを選ぶときに、やりがちな失敗を紹介します。

×

医療機器に一般用フィルター

漏れ電流が規格の上限を超えてしまうおそれがあります。医療機器には医療用を。

×

アースの有無を確認しない

クラスII機器にアース付きインレットを選ぶなど、機器の設計と合わなくなります。

×

パネルの厚さを見ない

スナップイン式は、対応する厚さでないとしっかり固定できません。

まとめ:選ぶ前のチェックリスト

パワーエントリーモジュールは、機器の「入口」をまとめて引き受ける、頼れる部品です。選ぶ前に、次の5つを確認しておきましょう。

  • スイッチ・ヒューズ・フィルター、どれが必要? → 必要な機能
  • 機器がふだん使う電流は? → 定格電流
  • アースは必要? クラスI か クラスII か? → インレットの形
  • 医療機器に使う? → フィルターの種類
  • どう固定して、どう配線する? → 取り付け方と端子

部品選びのご相談はアスカ電子へ

型番が決まっている部品のお見積りはもちろん、「この用途にはどれが合う?」といったご相談もお気軽にどうぞ。SCHURTER社製品に特化した商社として、メーカーとも連携しながらお応えします。

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